お父さんがブランコしてたよ

お家でブランコしてたよ

どうしたの?

お父さんは喋ってくれません。

つまんないから庭で遊ぶ事にしました。

お母さんもブランコしてたよ。

お庭の木でブランコしてたよ

お腹空いたよー。

お母さんはブランコをしたまま私に話しかけてくれません。

私は、私のお部屋に戻ってマイケルと遊ぶことにしました。

マイケルはうさぎだよ。かわいいかわいい兎だよ

マイケルは動かないよ

お母さんに言っても何も言ってくれません。

さみしいよ

私は泣きました。

目から沢山の涙が流れてきました。

私は、この家では独りぼっちになりました。

お父さんもお母さんもブランコをしていて私に話しかけてくれません。

気づけば、私の蒼いスカートと白いエプロンが濡れていました。

お父さんが買ってくれた不思議の国のアリスの服でした。

ロンドンにあるお洋服屋さんで買ってくれました。

私は、アリスが好きでした。

この服は、とてもお気に入りで、

この服を来ていると本当にアリスになったみたいでした、

でも、この髪の毛だけで全てそれが砕かれてしまうのです。

この、白い髪の毛で。

だから、このアリスの服は一番大切にしていた物です。

でも、その服は濡れていました。

私は泣いてばっかりだったから、

おしっこしたのも分からなかったようです。

どうしよう。またお母さんに怒られる

私は、ブランコをしているお母さんの目をくぐって、秘密の裏庭に行きました。

私は裸になり、その服を水で洗いました。

しかし、それでさらに後悔しました。

このびしょびしょの服では、さらにお母さんに怒られてしまいます。

私は、その服を抱えて泣きました。

そして、正直にお母さんに話そうと決めました。

お母さんはまだブランコをしています。

私は、正直におもらしをした事を話しました。

お母さんは何も答えませんでした、


お母さんは私の事が嫌いになったのでしょうか。

私は、また泣きながら部屋に戻りました。

そして、その服を部屋に干して乾くのを待ちました、







夜になったら乾きました。

でも、お父さんとお母さんはまだブランコをしています。

お腹が空いたよ

お母さんは何も答えません。

なんだか、お母さんは臭くなってました。

私は、空腹感で泣き出しました。

それでもお母さんはブランコをしていました。

私は、台所に行きました。

そこにあったスコーンにジャムをつけて食べました。

独りぼっちの食卓でした。

私は、まだ涙が枯れませんでした。

ずっとずっと泣き続けていました。

だから、スコーンはとってもしょっぱかったです。

お父さん、お風呂に入りたいよ

お父さんは何も答えません

一人じゃ怖いよ

お父さんは何も答えません

どうしていつもみたいに一緒に入ってくれないの?

それでも何も答えません

私は、泣く泣くお風呂をあきらめました。

私の部屋に戻ると、そこには無かったはずのドアがありました。

どうしてここにドアがあるの?

私は、疑問に思いました。

いつのまにか、ドアがそこにあったのです。

そのドアを開けてみると、

そこには長い廊下がありました。

床はタイル床で、壁にはたくさんの絵が飾られていました。

目をえぐりだす顔

血を吐く女の人

笑っている口が大きい人

人を食べるドラゴン

歯医者

私のおしっこの出る所

お父さんのおしっこの出る所

私は怖くて、お父さんの所にかけこみました。

怖いよ怖いよ

私は、お父さんにしがみつきながら、その夜を過ごしました。








朝がやってきました。

けいさつの人が家にやってきました。

けいさつの人がお父さんとお母さんを車に乗せました、

連れていかないで。

お父さんとお母さんは何もしてないよ


けいさつの人は、悲しい顔で私のお父さんとお母さんを連れていきました。

私も車に乗る事にしました。

着いたのは幼稚園でした。

けいさつの人は、

またあとで迎えに来るからね

と言っていました。




幼稚園では、誰も私と話してくれません。

だから、幼稚園に行くのは嫌でした。

でも、今日は話しかけてきてくれました。

『辛かったね。』

先生はそう言って、頭をナデナデしてくれました。

私には友達がいなかったけど、

今日は、皆が話しかけてきました。

『近づかないで』

『来るなよ呪い』

『お前のお母さんとお父さん、居なくなっちゃったんだって?』

私は、ほとんど何を言ってるのか分かりませんでした。

でも、おもちゃを私に投げつけたりしてきました。




そして、けいさつの人が来ました。

私は、もう帰るのだそうです。

お家に帰ると、知らない人が家に居ました。

この人達が、私のお父さんとお母さんになるみたいです。


お父さんとお母さんは、私の事を無視しました。

ご飯も、私だけスコーン1個だけでした。

お父さんとお母さんはどこ?

お父さんとお母さんは笑いました。

『んなものもう居ねえよ』

お父さんとお母さんは遠い国に行ったのでしょうか?

どこでもブランコのできる国に私を置いて行ってしまったんでしょうか?


お父さんとお母さんは、私の部屋をめちゃくちゃにしました。

私の大好きなマイケルも捨てられました。

私の熊さん人形もバラバラにされました。

今度、この部屋は新しく生まれるお父さんとお母さんの子供の部屋になるそうです。






私の部屋は何も無くなってしまいました。

私は何も無くなった部屋で泣きました。

でも、私の部屋は無くなった訳ではないそうです。

今度、私の部屋は物置の中になったみたいです。

物置の中は、いろんなものがあります。

自転車

憲兵さんのお人形

オルゴール

ドア



ドアは、物置には無いはずだった

私は、そのドアに手をかけて見たが

そのドアは壁から離れています。

開けても、外れたドアが壁に衝突するだけでした。

ドアと枠の隙間を覗いてみると

そこには物置の空間がありました

枠も壁にのしかかると、ドアは閉められ、そこにはドアの隙間で見た物置の空間がありました。

私は、家に入ると

お父さんとお母さんは言いました

『あなたのお家はあそこでしょ!!!』

と言って、私を物置へ放り投げました。

そして、物置の入口のカギを閉める音がしました

私は閉じ込められました

夜の物置の中は怖くて、私は泣きだしてしまいました。

買ってもらった時はとてもうれしかった憲兵さんまで、とっても怖く感じました。

あまりに怖すぎて、私はまたおしっこを漏らしてしまったみたいです。

また、アリスのスカートが濡れました。




しばらく時間が経ち、私はもう二度とここから出られないのではないかと思いました。

物置のドアも、全く動きもしませんでした。


昔にも、お父さんに怒られてこの物置に閉じ込められた事がありました。

でも、その時は私が大声で泣くとすぐに出してもらえました。

そして、私の頭をナデナデしてくれました。

『もう二度と悪い事はしちゃ駄目だぞ』

お父さんの優しい声が私は好きでした。



でも、いつになってもお父さんは開けてくれませんでした。

この暗闇も、なんだか慣れてきました。

それでも、怖くて動けませんでした。

私は、またその物置にあったドアを見つめました。

そのドアは、完全に壁にもたれかかっていました。

ドアノブが、なんだか動いているような気がするのです。

ギシギシ!!ギシギシ!!

そのドアノブは、さらに激しさを増す様にドアノブを動かしました。

私は。そのドアのドアノブをにぎりました。

すると、そのドアノブは急に動くのを止めました

すると、その場にはとても怖い無音の静けさがありました。

私は、ドアノブを握ったまま座りこむと

そのドアは急に開きだしました

そこに壁などなかったかのように

するっとドアが開きました

ドアの向こうには、一人の男の子がいました

男の子が、銀時計を見ながらニヤニヤしているのです。

私は、その男の子に近づきました。

何が面白いの?

男の子は、私の方に振り向きました

『バーカ』

男の子がそう言うと、後ろの扉は閉まりました



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